40代薬剤師の学びなおしブログ

医療を幅広く学びなおしてみた

免疫力をアップする科学 その6

前回までは主にがんについての記載でしたが第6章はアレルギーについてです。現代日本の清潔社会の問題点についてなど。それでは見ていきましょう
 
内容
「日本では1970年代以降急激にアレルギーの数が増えていき、都市部では90%以上の人がアレルギー体質になってしまったという報告がある。それはキレイ社会が原因であり、以前は寄生虫が蔓延しいたがその寄生虫がアレルギーを抑える物質を出していたためである。そして日本のみならず先進諸国でその傾向が見られ、欧米では衛生環境仮説を支持する報告が増加している」
 
考察
これはかなり衝撃的な内容となっています。衛生環境の向上がアレルギーを招くという皮肉なのと寄生虫がアレルギーを抑えていたという事実。もちろん、きれい好きのおかげで感染症が減っているというのはまぎれもない事実ですがその反動としてアレルギーが出てきたということでしょう。そしてここ数年のコロナの影響によりマスクや過剰な消毒の影響がどう出るのか。マスクを外すようになってからヘルパンギーナやRSウィルス、そのほかのどの痛みや咳を訴える人が真夏なのに明らかに増えています。季節外れのインフルエンザも出ていたりとちょっと異常にも感じる傾向が。無菌状態に慣れすぎるとこんなに短期間で異常が起こるものだと不安に感じます。人類数百万年の歴史でここ数十年の間に無菌状態になっているのでそれは人体が文明についていけないというのも納得なのかも・・・

免疫力をアップする科学 その5

前回はNK細胞ががん予防に重要なのを見てきましたが、第5章はNKの他にも重要な因子や食品について、実用的なことが述べられています。
 
 
内容
「腫瘍壊死因子TNFはがん細胞を殺す作用を持っておりキャベツやナス、大根、バナナやスイカに多く含まれる。緑茶のカテキン類は強い抗酸化作用と突然変異抑制作用がある。ニンニクは最強のがん抑制食品でスルフィド類が癌細胞の新生血管の生成抑制やがん細胞のアポトーシス促進、活性酸素抑制、免疫活性化などたくさんの作用がある。きのこ類はβグルカンの免疫賦活作用と抗酸化作用によりがんを抑える」
 
考察
どれも聞いたことがある内容ですが改めて医学的に証明されているもののようです。しかも手軽に入る食材が多いので患者さんにも勧めやすいですが果たしてどれほどの効果があるのかのエビデンスが欲しいです。自分で調べろと言われるとそれまでですが笑
ニンニクは血液サラサラにしたり血管を強くしたり滋養強壮に良かったりでまさにスーパーフードですね!あの匂いさえなければ。。そう考えると二郎系ラーメンも捨てたものではないと、もちろんスープの完飲をしなければの話です。なんでもほどほどに

免疫力をアップする科学 その4

前回まで腸内細菌の役割について見てきましたが今回の4章はナチュラルキラー細胞<NK細胞>についてその役割や高め方が書かれています。ホルモンとNK細胞の活性化機序やストレスによるNK細胞の活性低下などありますが特に気になった心の持ち方が免疫を変えるという項について
 
内容
「心の持ち方が免疫系の強弱に深く関係していることが知られており神経・内分泌・免疫系が三位一体となってバランスを取っている。その機序は好き嫌いの感情が情報伝達物質POMCを合成し、それがポジティブな感情の時はエンドルフィンやドパミンなどの善玉ペプチドを促し、NK細胞を活性化させる。ネガテイブな時はアドレナリンなどが放出されNK細胞の活性は低下させる。」
 
考察
ストレスが免疫を低下させたり、笑うと免疫アップとよく言われていますがそれがどうしてかというのを裏付ける章でした。POMCというのは初めて聞きましたがこれが感情の正負を判断しているとのことです。ますます人の体って神秘的だと。もう一つフィンランド症候群の記述があり、生活習慣の節制群と制限なしの郡に分けた場合、制限なしの群の方が死亡率がはるかに低かったというデータがあるとのことです。無理に健康を意識しすぎてストレスを溜めるよりも好き放題にやった方が長生きとはなんという皮肉なのか。でもこれもデータの1つなので鵜呑みにせずに。しかし普段常識としていることと矛盾している文献などが多いのなんの。。。

免疫力をアップする科学 その3

免疫の本、前回腸内細菌の重要性について見てきましたが今回は脳と腸の相関について見ていきたいと思います。
 
内容
「第3章 腸内細菌が脳の発達を促したり、幸せホルモンのドパミンセロトニンを脳に送る役割がある。その結果浮気を防ぐなどの効果が報告されている。またイライラやストレス反応を抑えたり、鬱や自殺を防止したりなど脳を実質的にコントロールしており腸は能より賢いと言える。」
 
考察
腸にセロトニンの90%が存在しているというのは既知のことですが腸内細菌が脳に送っているというのは知らなかったです。そして浮気の防止効果があるって本当なんですかね笑遺伝によって決まっていると聞いたことがありますが、個人的にはその人の性格と生き方や環境の方が大きいように感じます。それはさておき、セロトニンドパミンを脳内に届けるということはメンタルや行動にもモロに直結しますね、腸活は想像以上に大事だなと感じます。薬局の健康イベントでも腸活に特化したものなど取り入れてみようかなと思える章でした。

免疫力をアップする科学 その2

前回は免疫の働きについて見ましたが今回は2章、免疫のカギを握る腸内細菌ということでざっくりと記すと腸内細菌のそれぞれの役割や腸内細菌を増やす方法、生活習慣について書かれていますが特に印象的だった内容について
 
内容
「本来腸内細菌は非自己のため免疫で排除されるはずだがそうではない。免疫は非自己が自己にとって危険か否かを判断しているのではないかという説がありデンジャーセオリーと呼んでいる。しかし腸内には悪玉菌も存在しており、この説が成り立たない。それは実は悪玉菌も有益な働きをしているのではと調べてみると免疫強化やより悪性の高い病原菌を排除する役割を担っている。」
 
考察
この2章もかなり面白いことが書いてありましたが中でもデンジャーセオリーはすごい機能が備わっていると驚きました。大腸菌ウェルシュ菌など免疫が見分けているのですか!思った以上に複雑ですね。ともあれこんなに複雑な腸内フローラを抗生物質が壊したり食品添加物が加わることで菌交代症が起こる。しかも免疫系のみならずセロトニンも腸内にほとんど存在していることから精神疾患にも関わるという恐ろしい話。やっぱり抗生物質は耐性菌だけでなくそういった所にも影響が出てくるんですね。菌を退治するために出る抗生剤が免疫力を下げてしまう。なんとも悲しい話です。薬局でもやたらと抗生物質が出ますがちょっと考えてしまいます。

免疫力をアップする科学 その1

これまではがん治療に対する書籍を見てきましたが、その中でとりわけ注目されているのが免疫力。私も学生の頃免疫学を学んだことがありますが言葉や考えがとにかく複雑でとても苦手意識があったことを覚えています。
今回読んだ
「免疫力をアップする科学」藤田紘一郎氏著
は序章で免疫について図解でとてもわかりやすく解説しており、免疫のいろいろな機能をカラー図解で日常生活にどう関わっているか、普段の生活でどう気をつければ良いのかを開設してくれています。それでは見ていきましょう。
 
内容
「第一章:免疫には感染防衛、健康維持、老化予防が主な働きである。通常の人でも毎日がん細胞が5000個程度出現しているがそれを攻撃してくれるのも免疫機構である。では免疫力はどこからやってくるか、70%は腸で30%は心である。よって良い腸内細菌を増やすためにも野菜や発酵食品を摂り、食品添加物を控えるのが重要。また心の面では笑顔、規則正しい生活、ストレス解消も大切である。」
 
考察
私が今まで学んできた王道的な内容でやはりこの理論がしっくり来ます。別の医師は免疫細胞はがん細胞を異物とは認識できないため免疫を上げても意味がないという先生もいらっしゃいますがどちらかというと私は免疫力は大事というのを支持したいです。またがん予防以外にもコロナをはじめ風邪から結膜炎、水虫などあらゆる臓器で感染症は猛威を振るうため免疫はとても大事なのは言うまでもありません。現在、抗生物質もかなり耐性菌が見られるため予めかからないようにしたり、治癒を早めたりするのが理想だと思います。あとこの本は免疫についてかなり本格的な内容をとても平易に書かれており、学生時代の専門書よりずっと取っ付き易くていいなーと。学生さんもこの本で勉強すればいいと思いました。

がん治療革命の衝撃 その7

内容
「バスケット試験: 従来の治験は対象を臓器ごとにしていたがバスケット試験は特定の遺伝子変異に注目して行う。これによりがんの発症部位に関わらずがん治療の新薬を使うことが可能になる。
 ワトソンゲノミクス:IBMが開発した人工知能を使った遺伝子解析で数千万の論文を学習し、あるがん患者のケースについてそのデータから調べ上げデータを総合した上で情報を簡素化し、最適な治療を医師に指示する。わずか2−3分でこれができる。
がんゲノム情報レポジトリー:がん医療中核拠点病院から詳細なデータが送られて蓄積されたデータベース。遺伝子情報だけでなく薬の効果や身体状況などのデータで人工知能も使って革新的な診断法や治療法に結びつけることが期待される。」
 
考察
バスケット試験について、臓器ではなく特定の遺伝子変異に対しての治験ということで最近発売されている分子標的薬がまさにこの治験の成果なんだなと実感できました。もうすでに革命は起こっていたと。普段あまり抗がん剤に馴染みのない薬局ですがこれから勉強するのにこういった情報があると楽しいかも知れませんね。そしてワトソンゲノミクス、数千万の論文って。。これはもう人にできることではないのでゲノムとビッグデータの組み合わせは最強だと思います。この本はこれで最終回ですがこれほどまでに技術の進歩は目覚ましいと感じる一方で人の果たす役割は技術的なところは減っていき、メンタル的なサポートに行くような気がしてなりません。コミュニケーション能力の向上、大事ですね。あと1つ思ったのがこの本は良いことばかり書いてありますが、デメリットについてあまりないような、まあなんでも信じ過ぎず情報の1つとして捉えておくくらいがちょうど良いんでしょうか。